美術鑑賞社 04(zero-four)ギャラリー
2004年2月10日


 

 第54回一選線美術協会展

 どの美術団体も伸び悩みの現状だが、一線美術協会の第54回展は、一般入選135点と増加した。会員たちの地道な努力の成果言えよう。したがって一般のなかにも、多様な傾向の、かなり良い作品が見られた。会は今後とも、いっそう新人育成に力を注いでゆくべきであろう。

 委員長を務める長島美勝の「Les amis」(=作品写真右上)。宗教的モティ―フにも思われるイメ―ジに、少し変化が見える。影絵の人形や船の構成に、手の表情の人間像が心のふくらみを持ってくる。上野直雄の「03ー潮風」(=作品写真左上)は、事物のリアリティ―の個々の関連性において、視点が面白くなってきた。有村隆雄「群―。」(=作品写真左側下)、マティエ―ルを活かした牛群の重厚な表現。藤尾栄「トレド好日」(=作品写真右側下)は、光あふれる客地の情景に心を融和しつつ的確に表現。野田利常「一心」、群像の構図の動きのリズム感。桶谷律「武人回想」、古代文化へのロマンを特有のタッチで形象化。根岸富夫「北の漁港」は、北国の透明な冷気をとらえる。

 飯塚吉光「静物」=文部科学大臣奨励賞、日常生活へのさりげない視線の面白さ。他、堀内英男「峡谷の街」=岩井賞、丸山實「春のきざし」=上野山清貢賞」等の確かな描写力に注目。 【佃 堅輔】

(10・5〜12、東京都美術館)

  


 

 瀬下妙子展

 1976年、作者は木下サ―カス団に約1ヵ月取材し、その舞台裏からピエロや芸人の実生活にまで迫り、共に心をかよわせ、表舞台とは裏腹の人間味に溢れたその本質的姿を、セピア系の色彩に託して描き出した。

 時は2003年へと移り、27年ぶりに同じサ―カスを、埼玉の新都心まで見に出かけた。舞台はより華やかさを増していたが、光を浴びた芸人やピエロ達は、ただ客席から眺めるだけの存在となり、かつての風情は失われていた。(作品写真右「わたしのサ―カス今昔物語」)作者は一人の傍観者となり、舞台と観客を相対的に捉えて描くしかなかった。今回の個展はこれを総括しタイトルを『サ―カス今昔物語1976から2003』としたものである。

 出品は他にも、魂のこもる一連の「蘭」シリ―ズや、12点を数えるエスキ―スの「線はスピ―ドの曲芸師」、そして昨年の夏に滞在したニュ―ヨ―クでの「NYきものの旅」シリ―ズや、その姿を撮影した写真もあり多彩。創作にかける意気もまた益々軒昂。

(11・2〜8、銀座/ギャラリ―ムサシ)

 


 

 第6回公募インテリアの書展

 《書の一輪ざし》を標榜し、室内に書を飾ることを目的とした、日本唯一のミニ作品によるこの公募展も、第6回を迎えてますます充実。今年は日本各地の34都府県を始め、韓国、中国からの応募もあり、その総数は580点を数えた。特に韓国は62点の応募作の内5点に絞っての出品であり、根強い人気の程が窺える。

 昨年の記念展が、良きステップとなっており、出品数も増加の一途をたどり、水準も年々の向上を成している。受賞作のみならず、一般入選や審査を希望しない作品にも感性の閃きを見せる作品が結構多い。各自の創意工夫により、インテリア感覚にマッチした書としての在り方も、徐々に確立されようとしている。

 今回の最高位、ダイヤモンド賞に輝いた河本麗子「明け方の月の…」(=作品写真右上)は流麗なかな美が、内から湧きいずるが如く現代空間に漂う。他、取り上げた各作は全て審査員賞とダブル受賞。以下紹介のみながら、先ずエメラルド賞より大久保美舟「万葉集」=大野篁軒賞(=作品写真左上)、小林幸「素」=田中鳳柳賞・三宅相舟賞(=作品写真右側下)、宮前一琴「天真爛漫」=風岡五城賞(=作品写真左側下)。ルビー賞の片宮則子「花の如く…」=竹澤玉鈴賞、加藤涼月「翔」=新井光風賞、玉木水象「胡蝶…」=田宮文平賞。夢作品賞では胡紫南「山高月小」=石川芳雲賞。

(11・12〜15、池袋/東京芸術劇場)

 


 

 第26回一東書道会全国書道展

 兵庫県を中心に、全国に会員約千五百人を擁する、一東書道会(会長井茂圭洞)の全国書道展。今回より使い慣れた兵庫県民会館から、平成14年10月に開館した、灘区の原田の森ギャラリ―(兵庫県立美術館王子分館)での開催となった。

 より広くなった会場は使い方も自由で、その展示方法にもセンスが問われる。今回は会場中央を開放し、左手にはメインとなる役員作、その対面には桐山小園=文部科学大臣奨励賞や、吉田孝子=龍洞賞、小林芳枝=一東大賞など、上位の受賞作が展示された。

 天井も高いこの会場は開放感に溢れ、各役員作も井茂会長の4×8尺に準じて大型化。全体的に略シンメトリ―に展開された、一連の3×6尺や2×8尺の作品や、周囲に配した陳列ケ―スの巻子や折帖も合わせ、なお余裕が持たれていた。

 井茂圭洞会長は若山牧水の「今日もまた…」他三首(=作品写真右上)。辛子色の絹本に現代感覚を込めた筆致で、文字の大小に起伏を凝らし、起承転結を立体的に纏めた。宮重小蘭副会長兼理事長は、平家物語の一節(=作品写真左上「祇園精舎の鐘の聲…」)を独自の調和体的表現で、強い線質を活かして力感ある大字で統合。他の役員作も理事長代行の八社宮翠石「わがそのの…多二首」(=作品写真右側下)をはじめ、副理事長の井川悠香、園部琴城、村里桃苑。常任参事高山溪洞。そして専務理事の面々等、各自その実力を存分に示し好印象。出品約470点。

(11・21〜23、原田の森ギャラリ―)

 


 

 第64回千草会書展

 山田勝香会長、西本支星副会長、芝松翠理事長をはじめとし、副理事長に片岡紫江、中川楚苑、丸谷愛子、村田華穂、山本雅堂、企画委員には天野静代、大杉伸暁、窪田晶香、幸田華堂、谷迫裕香、吉澤劉石。以降常任理事、参事、理事の作品約190点と、同人および準同人の作品約600点が展示され、華やかな雰囲気の会場は、まさしく盛況。

 今回も昨年と同様に、入ってすぐの第1ブ―スが理事、次も同じで理事の作品が並び、一際広い第3ブ―スが役員による主壁面となっている。

 山田会長の「佐々木信綱の歌」(=作品写真右上)は、渋い銀緑の濃いめの料紙に、食い込み鋭き濃墨で、渇筆のさばきも見事な快作。まるで文字が浮かび上がるが如き立体感は、もとより持ち前とする力強き筆致と洗練された線質を、存分に駆使してこその表現といえよう。平面を超越した三次元的様相は、現代芸術における、一つの重要なファクタ―に上げられる。西本副会長は二曲屏風に、おちついた風情の「白菊」(=作品写真左側)。まろやかな筆線のうちに、しっかりとした一本の筋をとおし、散らしを効果的に用いて、格調高い作品に仕上げた。穏やかな風貌が作者の人柄を映す。

 転じて芝理事長の作品「秋」(=作品写真右側下)は、線の練りも涼やかで、行間のリズムがこれと良く呼応して、全体を締める。凛として全てを必然性の中に収め、壁面芸術としての粋が凝集されている。他にも一年の真摯な錬成の程から、着目作が実に多かった。

(11・22〜23、マイド―ムおおさか)

 


 

 プロムナード・書画短信

第17回玄潮会選抜書展 会長寺井朴堂。第1会場の東京セントラル美術館に役員から同人まで。第2会場の東京銀座画廊・美術館を準同人と玄友とし、熱気溢れる作品群の315点で。 9・9〜14

第27回書研社展 故・植木九仙の後を、植木蒼穹を代表に、大森九鳳、森久圃、根本九高らの高弟が良く結束を固め、社中の和を以て恒例展を盛り立てる。 9・16〜21 銀座大黒屋ギャラリ―

第48回目白会書道展 切れ味鋭き『光成かな』で一世を風靡し、去る7月20日、百四歳の天寿を全うした先師仲田光成の書業を承け継ぎ、各自が一意邁進を誓って。 9・17〜23 松屋銀座画廊

第35回記念一煌会書展 創立者である小川瓦木遺墨展を併催とし、門下の104名が一丸となり、各様の墨象作に情熱を燃やして。 9・25〜27 新宿/朝日生命ギャラリ―

第41回抱一書展 理事長柿下木冠。漢字の一字書や少字数を主に、多字やかな、調和体など。52名が書の芸術性に、実に真摯な取組を見せ、見応えも上々。 9・29〜10・5 銀座ア―トホ―ル

書道芸術院秋季展 会長恩地春洋。『燃える作家集団』へと、21世紀の書を目指し、推薦作家5名と選抜の精鋭達、及び役員160名らが一丸となり邁進。 9・30〜10・5 東京セントラル美術館

光荘会第17回寿展 主催の光荘書院(代表原光笙)は、女流の殿堂たる光荘会の直系。銀座ではこれが2回目となる。18名が漢字やかなに、多彩な佳品を展開。 9・30〜10・5 銀座藤屋画廊

秋の東方展 日本画による秋季展は略20号に統一。創立会員結城天童をはじめ、時田尚武ら会員11名、準会員2名、協友5名で東都在住の19名が出品。 9・30〜10・5 ロイヤルサロンギンザ

'03独立秋季書展 準会員で約17%、会友は約3%との厳選を経た179点の作品は、素材や表現にも各々精一杯の気概がこもり、その意義も実に高らか。 10・2〜7 新宿/朝日生命ギャラリ―

第18回秀門社展 先師三村秀竹亡き後8年。石川翠流を代表に一門の結束もなお堅く、オ―ソドックスな漢字行草を主体に、地道に前進を続けている。 10・2〜7 銀座松坂屋カトレヤサロン

第41回抱土社展 独立書人団のベテラン勢21名が、広い会場に一人5mの壁面を割当て、大作主体の展観は、その年輪と共に充分自己の世界を深めて好評。 10・7〜12 東京銀座画廊・美術館

第19回瑤樹会書展 主宰岡村翠瑤。華やかな雰囲気の会場には、世代間のギャップも全く無く、書、書のア―ト、陶芸、花の作品等で、楽しき空間を醸成。 10・9〜12 志木/ふれあいプラザ

第38回閑雅書道展 代表舟戸俊翠を中心に、恩師川上柏翠の遺墨を掲げ、社中の45名が和を以て出品。漢字の行草を主に仮名等、自己の書を伸びやかに。 10・9〜14 銀座松坂屋カトレヤサロン

春和会書展 主宰河村和子。隔年の開催で今回が3回目。先師仲田光成の遺墨を特別出品に、社中の24名の足どりも良く出揃っており、自由なかな美が堪能された。 10・10〜13 銀座松崎画廊

第17回西蓮会書展 主宰赤平泰処。当初は学生だった門下も今や中堅。出品者も倍増して70名となり、漢字作にかなや詩文書等、生きの良さが何よりの身上。 10・10〜14 銀座かねまつホ―ル

第28回鶴心同人書展 会長山田松鶴。同人展は年毎に出品者が増え、現在は56名が出品。専ら漢字の世界だが、その力量から各作味わいが異なり見応え充分。 10・15〜19 銀座かねまつホ―ル

第48回集美書道展 会長伊藤枕石。全紙縦三分の一の書象サイズに、漢字、かな、調和体と多彩な作品が会場を囲む。出品94名の大方が葉書大の作品も出陳し実に盛況。 10・16〜19 横浜桜木町/ゴ―ルデンギャラリ―

第18回全国臨書模刻展 酒井子遠会長の亡き後を、岩浅写心理事長を中心に結束も堅く、全国から790点の出品。質実共に水準を立派に確保しての前進に今後を期したい。 10・17〜19 埼玉会館

第17回貞香会小品展 理事長中村素岳。三千平方cm以内で、横は約60Bまでと寸法を規定。上手く世代間の交代を成した同会は、30〜40代の台頭著しく覇気ある作品が増加。 10・22〜28 銀座松坂屋カトレヤサロン

'03秋の日本自由画壇展 理事長橋本不双人。役員から壇人迄118名による選抜展。作品は20号〜10号迄。風景、人物、花等好個な題材を活かして。 10・30〜11・5 銀座松坂屋カトレヤサロン

第15回東京白鴎会書展 熊本に本部を置く白鴎書道会(会長中村天香)の東京支部会員37名が出品。真摯な錬成の内に濃密な作調を込め、一味違うかな美に注目。 11・4〜9 銀座鳩居堂画廊

第27回書壇巨匠展 主催M書道新聞社。ミニ作品による好企画には、文化勲章受章者の杉岡華邨氏を始め、名実共に現書壇を代表する48名が出品し関心を高めた。 11・4〜9 銀座鳩居堂画廊

藤沢古葉墨彩画展 テ―マを『人が動くとき』とし、20号から3号迄の45点で。フラメンコや裸婦、演奏家達に花の静物等、スピード感溢れる筆致を身上に。 11・18〜23 銀座松島ギャラリ―

第37回公募天真全国書道展 会長甫田鵄川。出品約530点。漢字行草を主体に他を交え、3×10尺の大作に果敢に挑む役員も多く、各々も制作姿勢も実直そのもの。 11・19〜24 大阪市立美術館

第12回神龍会選抜小品展 三宅剣龍会長以下、半切四分の一以内の寸法で、全国から参集した52名が、漢字、かな、調和体等の自在なる作品で。 11・21〜24 新宿/朝日生命ギャラリ―B室

書展太陽'03 先師金田心象の「他馬不騎」を特別出品に、村井虹城代表以下15名が、師風の基に書の必然性を求めて、あくなき探究を継続。対面では書の教室選抜展も。 11・22〜27 銀座書廊

第43回璞社書展 江口大象会長は355×192Bの超大作。3尺×12尺等の役員作が壁面の随所を締め287点。正会員、準会員、公募が557点で作調も幅広く計844点の出陳。 11・26〜30 大阪市立美術館

第10回全国書藝學會展 会長河本鶴翠。恒例の漢字行草を主とする書作品に、半切四分の一大の親しめる書・家に飾れる書130点を加え、約430点の出陳。一際充実した内容で10周年を祝う。 11・26〜30 大阪市立美術館

第24回臨泉会小品展 理事長佐々木月花。深き味わいのベテラン勢と、若々しい感性を活かした作品が、相互に良き調和を成し、各作に壺を心得ての書風を披瀝。 12・2〜7 銀座鳩居堂画廊

第16回郁文会書道展 会長高木聖雨。門下の117名と共に、碑学派らしく骨格逞しい漢字作が大方を占める。若手の精鋭も多く、今後が楽しみな本格的存在。 12・3〜7 東京銀座画廊・美術館

第20回産経神奈川百選書展 恒例の如く一流一派を問わず、県内の逸材を一堂とし、記念展に相応しき力作を出揃えて。 12・5〜9 横浜桜木町/ゴールデンギャラリ―・ギャラリ―守玄齋

第22回白峰社書展 代表後藤竹清。近代詩文書を主に一字書等を含めた503名の気概ある作品が広い会場を一杯に埋め尽くす。 12・4〜9 新宿/朝日生命ギャラリ―

第21回書海社師範展 今回の出品者は昨年比26名減で289名。その実数から言えば予想外だが、整然と並ぶ半切軸群は、やはり圧巻。 12・9〜14 東京セントラル美術館

第27回紫風会書展 会長小名木東邨。淡墨行草の翠軒流を継承する千紫会の埼玉県在住書家97名が出品。調和体も増えつつあり、作調も幅を広げて年毎の前進を果たす。 12・12〜14 埼玉会館

心芸墨美作家協会'03年選抜展 第1室の自由作と第2室の規定作で、72名が自己の書を追求。岩浅写心/宮崎桃香書展も同時開催。 12・16〜21 東京セントラル美術館

第64回南門ミニ書作展 一年の悼尾を飾るこのミニ作品展には、理事長大西昭堂以下の100名が出品。漢字の一字書や少字を大半に自在な各作で。 12・23〜26 横浜桜木町/ゴ―ルデンギャリ―

 


 

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企画・制作 美術鑑賞社 藤谷弥道

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