今年より久々に副会長の職が復帰。先ずは池田桂鳳理事長がこれを兼任し、また新たに土橋靖子及び日比野実の両氏が就任して、新体制をもって名門老舗の21世紀を、担ってゆく事となった。
出品は3×6尺の額装作を主体に、細字から大字にいたる多彩な仮名作品で、千八百有余点。
日比野光鳳会長の「富士」(=作品写真右上)は、新古今和歌集より西行の『風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな』を、渇筆の効果を存分に活かし、力強きリズム感が奥深さと相和して、品格をたたえる六曲屏風。
池田桂鳳副会長兼理事長の「山の宿」(=作品写真左上)は、山頭火の言葉を色違いの2枚に分け、遊び心の趣をも添えて、調和体風に仕上げた。土橋靖子副会長は近年の快調さをそのままに、良寛の「門外の春」(=作品写真右側下)を225×53B×5幅のパネルとし、前半の3幅に五言、後半の2幅はこれを口語体で受け、大字の筆勢も高らかに、上品な墨色が心地良い。日比野実副会長の「新緑」(=作品写真左側下)は、木下利幻の三首を105×235Bの料紙に、順次横書きとして、散らしや行間及び墨の潤渇等々、全体にフレッシュな感性を素直に披瀝して見応えを増す。
他、主なところでは、秋田素鳳、薄木嘉子、藤本玲舟、芳竹鳳雪=文部科学大臣賞、和田幸大=五鳳賞、弘岡有芳=京都府知事賞を挙げておく。
(8・6〜7、京都市美術館)
文化勲章、文化功労者で日本芸術院会員の村上三島会長が率いる、現代漢字書壇の屈指たる存在である長興会の恒例展。
本年度のテ―マは《それぞれの風格の書を求めて》。究極ともいえる課題に際し、いったいどの様な展観となるのかと、期待を膨らませて会場に入る。

先ずは村上会長の作品(=作品写真右上)の前へ。180×97B×2幅の調和体作。平易な日常の一こまが自らの言葉で書かれている。極めて自然体の書で、余白の美しさも氏独自のもの。名前や印を見ずともそれと分かる。風格とはテクニックのみならず、長年の不断の精進の果てに、少しずつ自然と身に付くものであろう。その人となりも無論のこと、また然りである。流石と唸らされる作品に接し、改めてこのような事が思われた。
続いては会の屋台骨を支える二大巨頭。古谷蒼韻は大伴家持の二首(=作品写真左上)を、一首ずつ前後半に筆致を変えて表現。局部的にも全体的にも一片の隙がなく、全てを必然性の中に収め、いかにも学者肌らしい緻密さが漂う。転じて栗原蘆水は、生涯の願いとなる「古に学び今の言葉で現代の息吹を感じ風格ある書…」(=作品写真左側下)への自らの率直な心情を、調和体で素直に書き抜く。他、着目された幹部作は杭迫柏樹「龍跳天門 虎臥鳳閣」(=作品写真右側下)、宮崎葵光「天地に通ずる者は徳なり…」、大河内仙嶽「一法傳聞繼老能…」及び、宇都宮泰然、井上澄慶等々。出陳約400 点。
(8・22〜24、大阪国際会議場3階)
高木聖鶴氏は、1923年、岡山県総社市生まれ。現在は日展理事、読売書法会常任総務、日本書芸院常任顧問、朝日現代書道二十人展メンバ―で、地元岡山では朝陽書道会を主宰する、現代かな界の重鎮である。そうした氏の東京では初の個展が、銀座のシンボル的存在で、格式も第一級の銀座和光で開催された。
《美しい百人一首・みやびの世界》と題された今回展には、傘寿の記念として、近作40点に新たに制作した40点を加えた80点が、銀座通りに面したウィンド―や、店内6階の和光ホ―ルに絢爛と展示された。ちなみに掲載の四曲屏風「阿部仲麿 古今集・覇旅」(=作品写真右上)もウィンド―を飾った新作の一点である。
料紙は当然、その表装に至るまで細やかな創意を凝らした、軸、額、屏風、巻子、カルタ等の各作は、聖鶴芸術に於けるかな美の粋を極め、書風も細字から大字まで、多岐に自在な風貌を示す。
会場は連日の盛況で、初日には約五千人を数えたとのこと。会期を通じた来場者は、多分この和光が始まって以来の数となろう。優美で気品あふれる雰囲気のなか、かな本来の美が堪能された。
(8・22〜30、銀座和光ホ―ル)
新たに理事長に就任した畑佐祝融氏のもとに、第32回日本文人画府展は好スタ―トを切った。
団体の在りようをめぐる諸問題は山積みしているが、その解決に向かっての彼のリ―ダ―シップに期待が寄せられる。
加藤弥寿子会長の「冬韻」(=作品写真右上)は、雪山の静寂を深い詩情で表現。畑佐理事長「渓谷」(=作品写真左上)は、俯瞰的構図を活かした雨の景色。今回も六曲一双の大作にその力量を見せる、湯原良江副理事長「尖閣湾の黎明」(=作品写真右側下)は、神秘的とも言える奥深き自然の景観を見事に定着させる。
今回の受賞者は、かなり変化したが、これは会の発展にとって、喜ばしい現象である。橋場き樹「風を待つ浄土ヶ浜」=文部科学大臣奨励賞は、広々とした海を暗示させる海岸線のとらえ方、その構図がユニ―ク。北村洋子「麗江の古い町氈v=日本文人画府賞は、古い建築物の構図的描写で見せる。勝見光雪の「大雪の朝」=東京都知事賞における、雪の質感と朝の雰囲気。ともにクリティク賞となった傳野綏樹「いっしょにお絵描き」における、子供への愛情あふれる視線や、漆原米子「憩いのひととき(麗江)」に見る、人物観察の確かさ。加えては若松房子「祈願」=篩雪賞。高野雪堂「冬の福島潟」=美術鑑賞社賞。矢島登勢=全日本美術新聞社賞らを挙げておく。 【佃 堅輔】
(10・5〜12、東京都美術館)
プロムナード
新年、明けましておめでとうございます。
21世紀も早4年目を迎え、これを好機とすべく状況を再リセットして、今後とも鋭意努力を重ねていく所存ですので、なにとぞ宜しくお願い致します。
インタ―ネットの部門においては、弊社関連のホ―ムペ―ジへのアクセス総数が、年間百万件以上にも達し、美術情報網の一つの核として、正に成熟の域に入ろうとしています。これからもメンテナンスに力を注ぎ、また更なる拡充をも果たしたいと思います。この部門と小紙「美術鑑賞」を両輪に、皆様のご支援を心に深く刻み、本年も意気高く邁進して行きたいと存じますので、なにとぞこれ迄以上のご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
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