美術鑑賞社 02(zero-two)ギャラリー
2002年11月10日/12月10日


 

 第28回日本自由画壇展

 1975年、河口楽土により旗揚げした時の会員数101名が、四代目理事長橋本不双人率いる現在では、評議員までの幹部数だけで101名、壇人、壇友を加えると、427名と四倍以上に発展した。

 このことは、社会における信頼度が、著しく増大していることを意味する。本来ならば大幹部全員の作品を検証すべきであるが、紙面の都合上、理事長及び副理事長3名と、大幹部への登竜門となる三賞受賞者の、合計7名の作品を紹介し、検証することとしたい。

 橋本不双人理事長の作品「歓」(=作品写真右側上)は、岩礁に寄せるさざ波が命を得て歓喜する如く躍動感に富む。副理事長池田蘭径の「バンブルク雪景」(=作品写真左側上)は、しっとりと落ち着いた秀作。同・間宮露庵の「シドニ―の岬」(=作品写真左側下)は、大陸の果ての厳しさを的確に表現。同・藤沢古葉の「裸婦2002」(=作品写真右側下)は、女性の心の裏側まで見せて見事。

 石山敏葉の「広場」=文部科学大臣奨励賞は、馬の肌の質感や、石畳の表現が良い。関口秋岳の「行く秋」=日本自由画壇賞は、重たいが丁寧に描いての努力賞か。早瀬律子の「カッパドキアの女」=東京都知事賞は、何か思い佇む女性の姿態が面白い。【小島一郎】

 その他、主な受賞者。楽土賞=可部徳古。NHK文化センター賞=綿引佐登。審査員賞=奥村映霞、中村美登ら4名等。

(8・21〜30、東京都美術館)

 


 

 2002長興書展

 書の展覧会といえば、まず主流を成すのが、漢字では額装二×八尺の、いわゆる十六平米作であり、かなの場合は三×六尺の横物ということになる。何故そうなのかは、ここでは論じ得ずとも、現在では定番として、すっかり定着している。

 今回の長興書展では、広く天井も高い会場を活かすべく、この枠を撤廃し、伸びやかな大作に自由な発想の作品が出揃った。出陳は村上三島会長(=作品写真右上「初夏西江畔…」)の縦九尺、横は三尺に迫る原雙桂詩をはじめ、横八尺を超える古谷蒼韻(=作品写真左側上「忘郷皆故國…」)の元政詩、横九尺に及ぶ栗原蘆水(=作品写真左側下「昨夜着征衣…」)の夏目漱石詩や、165×85cm×二幅の中島晧象「汝等諸人來此山中爲道聚頭…」、略六尺正方の杭迫柏樹「樓燈無影水聲饒…」、160×70cm×三幅の宮崎葵光「草色空階下…」、210×70cm×二幅の大河内仙嶽「天象陰溝無曉期…」など、日本書芸院における幹部クラス17名の各作を中央に、同院で一科及び二科審査員の資格を持った会員360 名の作品が、その左右にシンメトリ―な壁面構成で、一杯に展示された。

 今回のテ―マは『日本の漢詩文を書く』。もとより漢字は手中とするところ。各々が異なる発想から、水を得た魚の如く大らかな試みを成しており、自己表現の良き機会として創作を謳歌。大型作品によるこの試作は、絶好のチャンスとなって大成功を収めていた。

(8・23〜25、大阪国際会議場3Fイベントホ―ル)

 


 

 2002書道芸術院秋季展

 漢字・かな・現代詩文書・篆刻・刻字・前衛書と、書の全ての分野を包括する書道芸術院。『作家集団を目ざそう』と、具体的な方法を実施しはじめて三年。二月の上野での本展と、この秋季展を連動して、意欲的で優れた作家の発掘と育成につとめており、着々とその実績を上げつつある。

 5階会場では会長恩地春洋の「拳」(=作品写真右側上)をはじめ、名誉会長及び名誉顧問各1名、副会長小伏竹村(=作品写真左側「挑」)ら4名、顧問13名、参与榊原春岱(=作品「畿」)ら38名、理事長辻元大雲(=作品写真右側下「土岐善麿の歌」)、副理事長小林琴水(=作品「佛」)ら4名、常任理事種谷萬城(=作品「雷鳴」)ら17名、理事松原秀圭(=作品「掬水月在手」)ら41名、監事3名等、若返りを果たした新役員124名と、さる二月の第55回記念展で峰雲賞候補となった21名の審査会員作を併せ、145点の個性豊かな作品を一堂に展示。

 7階は会場を二分し、右側奥には、前述の本展の作品を参考に選ばれた大野祥雲ら5名の、気概溢れる大作を配置。日本各地の総局・支局13ヶ所と、海外でのシンガポール展を含めて順次開催中の、役員作品巡回展の出品作80点がこれを囲んで院の全貌を披瀝。また左側では首都圏在住の103名による、半切三分の一大の額で統一した、東京総局会員展も催され盛況。

(10・1〜6、東京セントラル美術館/東京銀座画廊・美術館)

 


 

 第31回日本文人画府展

 記念後の第31回展。とかくありがちな中弛みもなく、文人画的精神に基づく水墨画の世界を、マイペ―スで目指していることは喜ばしい。

 加藤弥寿子理事長「月待の滝(茨城)」(=作品写真右側上)は、大自然の一つの営みとしての滝の姿を力強く表現。日本海岸に並ぶ羅漢をモティ―フとした、副理事長湯原良江「海に祈る」(=作品写真左・六曲一双右)は、今回も縦210×横810cmに及ぶ六曲一双の屏風大作。雄大な海景に作家の宗教観を託す。同・畑佐祝融の「百尋ノ滝」(=作品写真右側下)は、滝を包み込む山岳を、ユニ―クな視点でドラマチックに構成。

 船木棗月「清響」、滝の持つ水の量感的表現。中里典子「連山暮色」、暮れなずむ空と山の墨色の情趣。玉置勤「奇岩奇峰」、山岳の形の個性的把握。笹川和也「御輿」での、戯画化された蛙の面白さ。山本瑞謙「酔夢風竹」佐藤巴子「緑蔭清流」橋場き樹「雪霽れる(玉竜雲山)」北村洋子「祈り气Aルプを渡る風」等々も、それぞれ確かな技法を見せる。

 受賞作では、スケ―ルの大きい風景空間を見事に描き切って、文部科学大臣奨励賞に輝いた、平山牧秀「氷河あらたな旅立」(=作品写真左側下)。日本文人画府賞となった玉野佳慧「竹林の阿羅漢」、阿羅漢の表情の面白さと竹林の直截な表現。東京都知事賞の藤崎千雲「祥雲」は、本格派の技法が冴える。

 加えてはクリティック賞=後藤茂樹、尾田久美。篩雪賞=土端羊石、勝見光雪、杉原阿都。美術鑑賞社賞=宮園美枝子。秀作賞=倉田次男、岡野美恵子。佳作賞=伊藤周次郎。新人賞=萩生英子などに注目。 【佃 堅輔】

(10・5〜14、東京都美術館)

 マ 日本文人画府のホ―ムペ―ジはこちらです

 


 

 第53回一線展

 世代交代による団体の盛衰は遺憾ともしがたいが、それを乗り越えてゆくことが会の大きな課題なのだ。若い世代の団体離れの状況下にあって、今年度は若手作家の応募が多かったという。長島美勝理事長を中心とする幹部の熱意は、徐々に成果を上げている。

 長島美勝「Les amis」(=作品写真右側上)は、同じ表題におけるシリーズだが、今回は自らも大好きなゴルフをする人たちを取り上げ、新しい視点の意欲作となっている。朱赤を活かした色彩効果に、画家は人間愛をこめる。同様にシリ―ズと見られるのは橋本光「風跡―う・つ・し・よ―」(=作品写真左)。世を映すこと、情念に染める世相の濃密なリアリティーの説得力は重い。ブルーに全てを浸す外川攻「石の記憶(ブル―ハウス)」(=作品写真右側下)、記憶すら石化されてゆく一人の男の姿が印象的だ。

 有村隆雄「群」=文部科学大臣奨励賞は、色調とマティエ―ルの調和に牛の群れを定着する。野田利常「祭」=一線美術会賞は、伝統と現代的イメ―ジ構成の斬新さに着目。加えては上野直雄の「'02の潮風」藤尾栄の「古都(トレド)」、及び、岩田司「N子の通勤路」、蔡國華「何来何去 '02-4」などが特に印象に残る。 【佃 堅輔】

 他、主な受賞者。岩井賞=根岸富夫。上野山清貢賞=金田一昭。一線美術文化賞=近藤愛子。同・委員賞=飯塚満之、新井修、浅見正一、原島トシコ、高橋克人。損保ジャパン美術財団奨励賞=飯田貴子。他各賞多数。

(10・5〜14・東京都美術館)

 


 

 瀬下妙子個展

 毎年、休むことなく続けて、これが36回目の個展。作家もファン達も同様に歳を重ねた。お互いにもう階段の昇降はきつい。との理由から長らく使用してきた、地下一階のサエグサ画廊から、銀座一丁目を少し入った、通りに面した画廊へと会場を移した。今後はここが発表のベースとなる。

 今回のタイトルは『時の破片』(=作品写真右)。昨年とは全く作調を変えた、20号から3号までの抽象作12点をメインに、恒常的でホッと一息つかせる「記憶に残る音の波」シリーズが9点、これに楚々として好感を呼ぶ「野の花々」シリーズ6点を加え、全27点が出陳された。

 50余色に及ぶ手製の絵の具が、透明感あるモザイク構成の内にせめぎあう。同じピンクでも僅かずつ違う。各一作に表出されたイメージは、作家の生涯を通じて脳裏に浮かんだ、折々の断片の集大成なのだ。終戦後の闇市やブリキのガラクタ等々、作家を巡る全ての事象が、今生きている事の実感として、現在の暗い世相とは裏腹に、暖色も寒色も皆、明るく描かれて共存し実在化される。

(11・10〜16、銀座ギャラリームサシ)

 


 

 プロムナード・書画短信

第10回開玄社書展 中村雲龍会長以下、会の精鋭たる仲間たち84名が、手頃な小品に自由な創意を込めて。漢字作を主体に詩文書や仮名もあり、和やかさも一入。 8・20〜25 銀座鳩居堂画廊

第28回玄賞社選抜現代書展 主宰金子聴松の2点をはじめ、会員112名が選抜に意気を上げ、漢字や近代詩文書に誠実な力作で応え見応えも上々。 8・28〜9・3 銀座松坂屋カトレヤサロン

第23回ima女流選抜展 油彩・日本画・水彩・パステル・水墨・工芸・立体と多岐のジャンルに、閨秀36名が略10号までの鑑賞作に、各々佳品を揃えて。 8・26〜31 銀座地球堂ギャラリ―

第46回凌雲書展 神奈川県内に23の支部を持つ凌雲社(会長城所湖舟)の本展。漢字各体にかな等で394点の出陳。大作も多く、個性豊かな作品も年毎に増加。 9・2〜8 横浜市民ギャラリ―

第16回玄潮会選抜書展 広い2会場を用い、会長寺井朴堂以下、役員、常任理事、理事、同人、準同人、玄友等で331名が出品。漢字の一字書や少字数を主に、多字数や一部にかなを交え、新たなエネルギ―が湧きだしつつあり、相互の錬磨に明日を展望。 9・10〜15 東京セントラル美術館/東京銀座画廊・美術館

50周年記念大東同人選抜展 会長石川翠流。同人より選出の189名の出品作は大方が漢字。その質実たる内容と高度な水準での纏まりに、半世紀の歴史を凝集。 9・10〜15 東京銀座画廊美術館

水野精一書展 自らこの20年を回顧する個展。3室を使っての会場は、大半が自詠による大作の世界、半紙で額も統一した未発表作による統合の世界、小品を主に足跡を辿る光明の世界から構成され、各々照明やム―ドを変え、三位一体となって全貌を語る。 9・12〜17 銀座プルミエ―ル

第23回蕉邦会書展 先師深澤青蓼ゆかりの同志の会。出品は漢字行草主体に、伸びやかな大作が目立つ30点。足並みが良く出揃い、雰囲気も実に和やか。 9・13〜16 新宿区立区民ギャラリ―

第47回目白会書道展 さる4月23日、兵庫県の竹野に記念館が開館した仲田光成氏の直門の会。結成以来すでに半世紀が過ぎたが、常に初心を忘れず高きを望む46名の真摯な仮名作が、恒例の会場に見事に華開く。 9・18〜24 松屋銀座画廊

第26回書研社展 今回は植木九仙会長の思わぬ急逝から、遺墨3点を囲んでの開催となった。門下の33名が一丸となっての展観は、師風継承の漢字作に、良き纏まりを見せ好印象。 9・24〜29 銀座大黒屋ギャラリ―

小伏小扇書展 書道芸術院常任理事、毎日書道展審査会員で、竹扇会の副会長を務める氏の初個展。三×六尺を中心に、大作から篆刻作品を含め17点の出陳。甲骨、金文等、古文字の魅力を現代書に積極的な展開で、個性の閃きを随所に見せ好評。 9・30〜10・5 竹橋/ア―トサロン毎日

憙齋八秩書展 書海社の会長、谷村憙齋氏の満80歳を一つの節目としての個展。近作14点、新作5点に小品を含め、特別展観の「獅子窟」「觀音聖堂」に代表される渾身の書で、氏ならではの世界を披瀝。 10・1〜6 東京銀座画廊・美術館

第5回書海社同人選抜展 谷村憙齋会長以下59名の出品者中、22名が初出品。概ねオ―ソドックスな漢字の世界だが、半切かその二分の一という小品に、新旧如実な錬成の成果を籠めて。 10・1〜6 銀座鳩居堂画廊

第40回全国公募日書家展 会長重田翠村。創立40周年記念となった今回展の出品点数は、昨年比52点増の625点。古典的な作品から現代的なもの等バラエティ―豊かな作品が出揃った。 10・1〜7 横浜市ギャラリ―

第17回秀門社展 今年七回忌を迎えた故・三村秀竹門下の会。半切の漢字行草を主に全74点の出陳。近年少しずつだが変化も感じられ、前進性は着実。 10・3〜8 銀座松坂屋カトレヤサロン

2002年独立秋季書展 独立書人団の準会員と会友を対象とし、その将来を担う新進作家の展覧会。全体で約22%との厳選を経て172点が展示され、内容も年々高度さを増す。 10・3〜8 新宿/朝日生命ギャラリ―

第47回集美書道展 会長伊藤枕石。出品は100名だが、葉書や会長の詩箋を含め208点の展示。全紙三分の一幅の細長い作品が壁面を埋め尽くすが、漢字各体を主に内容は実に多彩。50回を視野に、更に今後が期待される。 10・10〜14 桜木町/ゴ―ルデンギャラリ―

第16回西蓮会書展 主宰赤平泰処の溌剌とした若手の会だが、出品者も徐徐に増え、71名を数えるに至った。今回のタイトルは―書(kakushin)進2002―。清々しさが何よりの身上。 10・11〜15 銀座かねまつホ―ル

第16回研友社書展 会長田中鳳柳。古典の素養を活かした行草を主に、漢字各体が全て出揃い、幹部の大作をはじめ、広い会場は更に充実度を上げ、各作で手応えある壁面を展開。 10・15〜20 東京銀座画廊・美術館

第3回堀桂琴門流展 さる6月20日に堀桂琴氏が逝去され、2年ぶりの今回展は、日本では未発表の作品を含めた遺墨を掲げての開催となった。専ら仮名の世界だが、直門24名を筆頭に逸材も多く輩出され、大作から小品迄、151名による展観は実に壮観。 10・15〜20 東京セントラル美術館

第27回鶴心同人書展 会長山田松鶴。出品は鶴心書道会の最高幹部56名で、かな一点の他は全てが漢字。横幅70cmという規定の中、各作、一面貌の風格を表し、面目を立派に果たす。 10・16〜20 銀座かねまつホ―ル

第18回瑤樹会書展 主宰岡村翠瑤。『生活の中で楽しめる書』を目指して、伝統書のみならず、ア―ト感覚に満ちた作品や陶板などで、会員30名と共に約90点を出陳。会場内には、生け花と書を組み合わせた空間も設けられ、来場者の関心を高めていた。 10・17〜20 志木/ふれあいプラザ

第37回閑雅書道展 先師川上柏翠亡き後、丸三年が過ぎたが、舟戸俊翠を代表に、和をもって書を楽しんでいる。漢字作を主に仮名を含め49名が出品。 10・22〜26 銀座松坂屋カトレヤサロン

日本現代書バンコク国際交流展 主催東洋書人連合(理事長佐野丹丘)による19回目の海外展には、現代の息吹を伝える各作で123名が出品。継続の意義も高らかに実績を重ねて。 10・24〜28 バンコク/インペリアルクイ―ンズパ―クホテル

第16回貞香会小品書展 理事長中村素岳。小品が故、作品寸法は三千平方センチ以下。115名がこの規定の中で、漢字、近代詩文、かな等に多様な作調で応え、閃くセンスで各自の意図も鮮明に。 10・27〜11・1 銀座松坂屋カトレヤサロン

第33回青夏会展 主宰松本一。初めて全会場を使い、会員46名が大作から小品迄の92点を出品。風景や人物など、好個のモティ―フに持てる力を尽くして。 10・28〜11・3 銀座ア―トホ―ル

第14回東京白鴎会書展 会長中村天香。熊本に本部を置く白鴎書道会の東京支部会員35名による恒例かな書展。前会長の故・中村龍石の遺墨を囲み、各々雅びな世界へと全力を傾注。 10・29〜11・3 銀座鳩居堂画廊

 


 

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企画・制作 美術鑑賞社 藤谷弥道

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