書道研究書王社の恒例となる選抜書展。総勢70名、約90点の出品は昨年と変わりはないが、全般に各作の手応えが上がっており、年を追っての水準の向上が顕著である。
漢字にしても、仮名や調和体にしても、全く独自な開拓による流麗な師風が、先ずはその底流を成すものの、閃く個性も随所に見受けられた。
鈴木景堂会長は、縦書きの一行書ながら、横方向への動きに風を感じさせる半切軸「松聲不断風吟細」をはじめ、自在な線の練りに景堂調の神髄を伝える、自詠の扇面作2点(=作品写真右上「雲海の上ゆく雲の…」)と、七言の漢詩作で4点を出品。鈴木暎華理事長も、軸装の一×五尺一行に、単体調の文字がリズム感を生み出す「竹陰巧蔵三伏…」と、手中の陶板作3点(=作品写真左上「雲聳奇峰」)で計4点。
これに続く石島廻山(=作品写真右「浮雲遊子意…」)、大場大幹、石井香村(=作品「山寺の…他一首」)らも会の中軸を担うベテランらしく、漢字、仮名の各作に、持てる力量を存分に発揮して、壁面の要所を引き締める。
はれて景堂賞に輝いた片倉道子の「夏雲は…」は、文字の大小を活かしつつ、全体の構成に流れを一貫。暎華賞となった仲西明江の「花開萬人集…」は、全体的には柔らかな出来の二行だが、各一筆に確かな気合が籠もる。また熊川朱苑「長樂無極」は、小品ながらも味わい深き一点として着目された。
(7・5〜10、銀座松坂屋別館5階カトレヤサロン)
マ書王社のHPはこちらです(主な作品22点を展示しています)
豪奢なホテルの広い一室を使用しての展観は、やはりこの会ならではのものであろう。茜色の絨毯に一歩を踏み込めば一望のもと、百m余の壁面に寒玉書道会を代表するに相応しい、現代に息吹く絢爛たる仮名美の世界が展開されている。
実際は宮本竹逕会長と黒野清宇理事長を別枠とし、新鋭を含めた30名がその精進の成果を一堂に披瀝。今年は特に作品の大型化が目立ち、自詠の三首を潤渇自在に呼応させての座馬井邨(=作品「空にのぶ…〈部分〉」)、西行の和歌一首を堂々たる大書きにして意気に乗る後藤秀園(=作品「おのづから…」)の両四曲屏風をはじめ、多くの大作で見応えをより増している。
会場正面には宮本会長の芭蕉句「道の邊の…」(=作品写真右上)と、「これも皆…他一首」の額装作2点。また中央には8m以上に及ぶ古今和歌集の巻子が長々と広げられ(=会場写真右下)、卆寿を過ぎてなお書人竹逕の面目を施す。
黒野理事長の「安見しし…」(=作品写真左上)は、凜として余白バランスに現代的センス閃く万葉歌の大額。田島方外(=作品「君ありて…」)は飄々とした味わいの、自詠の茶掛け五連作にその人柄を映す。大河内暁水(=作品「敏馬浦を過ぎし時…」)は四×六尺にスマートな作調で、万葉と現代の接点を垣間見せ、西迫翠峰(=作品「春過而夏来良之…」)は万葉集より、持統天皇歌を二極に対比させてアカデミックな興味を誘い、渡邉笙鶴(=作品「ひきかえて…他一首」)は流麗な筆致に、実力の程を遺憾なく示す。他、川上沙翠、國次抱玉、嶋中蓬春、竹原冬青、東垣内桂舟、中井登眺、藤岡弘川、安田硯月、山下啓明、山本方園らの各作に注目。
(7・6〜8、大阪難波/南海サウスタワーホテル)
主催書道研究玄心会による第16回展には、劉蒼居理事長、明石聴濤(=作品写真左上)、松本龍鳳(=作品写真左下)両副理事長をはじめ、顧問佐藤宋石、振角白鵞ら4名、参事1名、総務大槻芳岳、田中溪琴、前田柳汀、三宅羅山ら28名、参与8名、常務理事有馬海龍、賀内翠雲、高井薫風(以上玄心賞)ら52名、評議員11名、理事角谷翠泉、西濱希苑(以上玄心賞)ら53名、幹事2名、同人210名、準同人110名で、全482名の出品。
一部に半切等の小品もあるが、大方は二×八尺や三×六尺に統一されており、一階の特別展示室から、メインとなる二階、そして三階へと、漢字行草に調和体をまじえた作品が会場を埋め尽くす。読売書法展と制作期間を重ねての強行軍ながら、流石に幹部陣の作品は各一作に気迫が張っており、見応えのある好壁面が展開されている。
劉理事長は掲載とした「吹塵」(=作品写真右上)と、情景を想起させる造形性豊かな調和体作「此人數舟なればこそすヾみ哉」、及び「大智如愚」の二曲屏風で3点を出品。還暦を迎えてなお盛んに、充実の度を上げている。これに続く幹部にも、仕事盛りの年代が揃っており、各体にその実力の程を存分に示す。多彩な作品が持つ確かな手応えは、絶えること無き日々の錬成の、裏付けと言えるであろう。
会自体も今が大いなる成長期。玄心カラーの確立も、これからがいよいよ正念場となろう。勢いに乗ったその動向には、今後一度たりとも、目を離すことが出来ない。
(7・12〜14、兵庫県民アートギャラリー)
京都における仮名の名門老舗として、プロとしての技、熟練の味わいを指向しつつも、敷居は高からず低からず、各自が『親しみやすい本格派』との自負を持っての制作となった今回展には、役員、理事、無鑑査等で、約千五百点の出陳。
第40回を記念しての特別展観には、第一室中央に先師日比野五鳳のコーナーを設け、小林一茶句「天文を…」と、万葉集より「これやこの…」の両額装作を展示。小品とはいえ、その存在感は未だに大きく、二作の対比という点にも、大方の関心が集まっていた。
日比野光鳳会長は、六曲屏風で古今和歌集より「秋風」(=作品写真右上)を出品。品格溢れる作調で、一服の清涼剤の如く、爽やかに移ろう自然の季節感を表出している。池田桂鳳理事長は、向井去来の二句を、左右と上下の展開で見せる「暑さ」(=作品写真左上)。構成力は持ち前のところだが、初句は横への開きで凌ぎ、後句を縦詰めとして、一作の内に各々の情感を融和させる。副理事長の天野琴音、氏田菖軒(=作品「道」)、後藤西香(=作品写真左側下)らも、各作にベテランらしき安定した作風を見せる。他、注目されたのは、若手のホープとして勢いに乗る土橋靖子(=作品写真右側下「松風」)、五鳳賞に輝いた藤本玲舟(=作品「天の河」)、万葉歌の情念を映す秋田素鳳(=作品「音色」)、日比野実等々。
(8・7〜8、京都市美術館)
プロムナード
秋風とともに、今年も残り三ヶ月を切った。
日常は取材と編集、そしてインターネットの各ホームページのメンテナンスに追われ通し。今後も年末に向け、これからが一番の繁忙期となる。
つきましては弊紙も次号は年末年始の合併号とし、日展を含めた12頁編集で、元旦に合わせてお届けしたいと思います。
これに伴い、年に一度の年賀名刺広告と紙代のお願いは、別便にて11月頃に送らせて頂きますので、読者各位には、何卒宜しくご協力下さいますよう、お願い致します。
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