美術鑑賞社 02(zero-two)ギャラリー
2002年5月10日


 

 第20回記念現代具象展

 この会は、1970年代、戦後の抽象全盛時代が一段落した頃、新たな絵画理念を求め、72年にグループ『アール・ヌーボー』を結成。短期間の展覧会や定期的な研究活動を続け、82年『索展』を作ったが、83年、実験的な具象絵画のグループ発足の気運高まり、その3月に世代、形式、会派を越えた面々による『現代具象展』の開催の運びとなり、今日に至った。

 会のリーダー田崎昭作氏が述べるように、《主張をもった新しい自由な具象絵画》を目指す。今回の出品者は、平面、立体を含めて17名。

 主なところでは、人間の生命感をうたう田崎昭作「山の神」(=作品写真右上)の新たな宗教画。透き通った白い花弁に裸婦を重ね、胎児と男の手を対比的に配して人間の生を見つめる田中曽女「悪の華」宇宙はイメージの万華鏡を、手中の色使いと構成で物語る、比企祥子「宇宙(そら)の鼓動」(=作品写真左側)。両手で掲げ持つ画中画に、オブジェの神秘性を捉える、設楽圭一の「熟成中」。宇宙空間に浮かぶ丸テーブルを舞台に、メルヘンチックな幼年時代の夢を紡ぐ前田麻里「星をつくる少年」。シャープさを兼ね備えた版画で、シュールな詩的世界を垣間見せる世古剛「バラの足音」(=作品写真右下)。シンメトリーな構図を基調に、明るい色調と鳥たちの絵図を示す水川義徳「バランスシリーズ ふくろうの森」等々。

 その他、佐藤忠弘、田邊光則、山本悦子、加藤正二郎、皆川美保子、谷口誠英、平林希命子らに注目。【佃 堅輔】

(3・4〜10、有楽町/朝日ギャラリー)

 


 

 第2回あきつ会役員小品展

 上野での本展から僅かに一週間。創立33周年目の年を迎えた同会の、役員有志50名による小品展が、銀座で開催された。

 出品は仲田光成会長(=作品写真右「新玉の…」)をはじめとし、運営委員、常任理事、理事の面々。額装作を主体に、軸、折帖、巻子など。料紙や表装にも細やかな心配りが成されており、小品ならではの典雅な世界が紡ぎ出されている。

 仲田会長は御年103才。百才を越えられても、なお矍鑠とされており、今回は青地に金の模様の料紙を用い、細字の微妙な線や散らし、また行間や墨の濃淡を自在に操って全体の立体感を出す。

 これに続いては、先ず島倉華越が軸に秋桜子の「山ざくら…」(=作品写真左)。鋭き切れの線質で、実に品良くまとめている。米本一幸は自詠句で「師の古郷(くに)の…」。扇面形のあでやかな料紙に、温もりのある筆で情感を醸す。同じく情景を思わせるのは、横山喜代子「ゆきのまゝに…」。仲田美佐登の「昔見し…」(=作品写真右下)は万葉集より大伴旅人の歌。行の散らしと線の対比も鮮やかに、空間の支配力を高めている。手島朱琳は他と一風作調を変え、額に万葉仮名を用いた三行で「三熊野之…」を出品し目をひいた。他、徳川春子、大井淑子、河村和子、水田芳美、稲垣治子らの各作に注目。

(3・5〜10、銀座/鳩居堂画廊)

 


 

 第36回東方展

 1966年5月に青龍社が解散すると、直ちに社中のなかの11名が相集い、同年6月25日に東方美術協会を創立した。

 以降36年、今日では会員、準会員、協友等、大作を発表できる同志の数が、60名を越える堂々たる会派に成長した。

 歳月は人の世の無常を物語る。先師川端龍子の意を体する創立会員が、2名も大作を発表している幸せを考えれば、優れた後継者が、伝統と革新の炎を燃やし続けることを祈念して止まない。

 創立会員の一人である結城天童の「春を待つ」(=作品写真右上)は、日本画の技法を駆使し尽くした雄大な風景画であり、雪国の冷気と僅かにめぐりきた温もりを感じる。同・大塚達夫の「まなざし」は、女性の肩からこちらを見る猫のまなざしが実像であるのに対し、鏡に映る女性のまなざしは虚像である。精神性の高い力作といえよう。会員作からは、時田尚武描く「霽雲(戸隠山)」(=作品写真左側)は威圧的に迫る断崖、明るさが戻ってきた空にも迫力がある。高頭信子の「龍潜花火」(=作品写真右下)は、強烈な花火の印象の中、天空に幻出した龍を見る激しい心象の世界。鳥海幸子の「秋立つ花」は繊細で豪快、美を感じる。

 推賞及び推挙は以下のとおり。協会賞=斉藤雪江、遠藤敬子、林佳子。奨励賞=山下サキ枝、伊藤香代子、岸加寿美、鈴木裕貴、秋山令子。会員推挙=道琳敦子。準会員推挙=伊藤やす子。協友推挙=竹島公子、坂野サク子、日比野朗子。【小島一郎】

(3・14〜24、東京都美術館)

 


 

 第42回日本南画院展

 水墨画は八世紀末、唐の玄宗帝に仕えた宮廷詩人で琴の名手であったと言う、王維(王摩詰)により始まるとするのが、今日定説である。南画の名は16世紀末から17世紀にわたり、明代の著名書家の董其昌が画法を確立した後使用されている。

 筆と墨と水と紙を選び運筆、墨の濃淡及び水を含ませたぼかしなど、無限の組合せにより風の流れ、水の音をも感じさせる南画は、精神性の極めて高い絵画表現である。彩色した、いわゆる墨彩画が多数派となることの影響は、後世の美術史家の研究対象となろう。

 直原玉青会長の「龍昇天」(=作品写真右上)は、激しく凄まじい人生を教えられた思いがする。逆巻く波濤以上に、九十八翁玉青の落款は見事である。町田泰宣理事長の「水の象(那智)」(=作品写真左側)は、いつにない強い意思を感じる力作。金箔の下地を用いたので、滝の水は胡粉で表現する事となったが、墨のみで描く滝の神々しさも見たい。市川皓副理事長の「白連雄姿」(=作品写真右下)では、地球造山の恐ろしさと静寂を見せつけられた。以上の他、水墨画の美は山本和夫、堀江春美、及び渡辺堂仙らの各作に見られた。【小島一郎】

(3・14〜24、東京都美術館)

 


 

 第1回一先会書展

 今般、平成14年3月を期して、一東書道会の創立者深山龍洞の指導理念を体し、師の心を心として、今一度原点より見直し、これを新たな出発点に、小山素洞会長、横山煌平理事長の体制のもと『一先会』が設立され、同会最初のイベントとしての書展が開催された。

 タイトルは《古典を基にした創作への展開》。

 兵庫県民会館の展示全フロアーを使用しての展観は、本来ならメインとなるべき2階を理事、常任委員、一般会員とし、役員展を3階、1階特別室には支局代表者展が割り当てられており、これだけでも、この会の本質的な有り様の一端が理解できる。3階会場では、先師深山龍洞の遺墨(=作品写真右上)を正面中央に、その両脇を一条摂政集を基調とした小山会長作(=作品写真左側・部分)と、香紙切の横山理事長作(=作品写真右下)が固めた。

 以下主な出品者(=基調とした古典)は、副理事長柏木小鈴=一条摂政集、神吉明美=和泉式部続集切、中島旭堂=藤原佐理。常任参事中本暢子=香紙切、堀江素琴=一条摂政集、山中孤舟=関戸本古今集ら5名。参事熱田双鶴=一条摂政集ら10名。総務理事内絹江=香紙切、小山素葉=香紙切、柴原月穂=寸松庵色紙、中川素香=香紙切、松本昌子=針切、由比浜嶺花=小島切ら15名。

 これに理事以下235名が続き、今は亡き師が目指した、古典を基本とした創作への道を、自力で表出する作品展の総出品数は271点を数えた。

 旗揚げとしては略順調なものといえよう。王道を渡る道は厳しいが、一丸となり、息長く歩んで行ってもらいたい。

(3・22〜24、兵庫県民アートギャラリー)

 


 

 第54回三軌展

 三軌展は国際的に活躍する作家の登竜門である位の、権威と誇りを持って欲しい。居心地が良く楽しいだけでは、単なるアマチュアの発表会になってしまう恐れがある。

 代表森田一男の「テロリストの長い列」(=作品写真右上)は、その意図のみを理解。大熊栄子「春暁」(=作品写真左側)は、朝まだきの霧の中、寒さをも感じさせるプロならではの作品。大塚健二「記憶の中で」=互井賞は、丁寧な描き込みを存分に活かした力作。吉田嵩の「輝く」は、3個のエレメントを組み合わせた、等大91個の正方形整列からなり、多色構成であるが何故か安らぎを感じる。

 渡辺シゲオ「風化する時間の中で(無常)」は市松模様の水底と水面に影を落とす球体、屹立する岩山、文明の空しさの表現か。また尾形美和の「刻の調べ」における暗黒の空に浮かぶ仮面は、何を語ろうとしているのか。共に実力派の心象力作と言えよう。他、徳嵩光造「出家踰城」、芹生芳郎「焼岳(上高地)」大槌隆「風のない午後」等に注目。【小島一郎】

(3・26〜4・4、東京都美術館)

 


  

 プロムナード

 私が所属する美術評論家協会は、春と秋に総会を開く。今年の春は去る4月18日〜19日、四国の松山で行われた。昼過ぎにJR松山駅で関西組と合流し、会場となる道後温泉の宿へと向かう。夕刻の総会まで、まだ充分時間があったので、ゆかたに下駄のいでたちで、道後のシンボルである『坊ちゃん湯』へ、ぶらりと一風呂浴びに出かけた。

 いかにも歴史と由緒を感じさせる木造三階建ての佇まい。横長の広い脱衣場の左右に、同様な石造りの浴場が二つある。温泉は無色透明の単純アルカリ泉らしいが、少し熱めで、体の芯まで温まる。その後、三階の奥にある『坊ちゃんの間』を覗きに行く。別段他と変わらぬ普通の部屋だが、やはり何気ない風情というものが感じられた。仄かな旅情に、機内誌で見た句を思い出す。松山は子規漱石のゆかりの地。

 


 

BACK
 NEXT


すべての著作権は作者に帰属します。
画像データ等は鑑賞を目的とする以外の2次利用を禁止いたします。
企画・制作 美術鑑賞社 藤谷弥道

連絡先 bijutsu@jcom.home.ne.jp


ホームページに戻ります。