1915年生まれの凄まじいパワーは、今年も健在であった。メインルームの中央にどっしりと構えた二曲一双「骨皮田の藤」(=作品写真右)、児玉三鈴理事長の作品である。墨の魅力を改めて実感する。
鶴田煕は山景「武甲」(=作品写真左)を穏やかに纏めている。廣島樹のヌード「朱夏」(=作品写真右下)は、筋肉を極限まで緊張させた燃えたぎる朱の肉体で、女の情念を見事に表現している。
日本画部幹部の作品には力作が揃っているが、平野義雄「青瓢」、岡本彩湖「早春譜」、森田緑「冬の沼」、林克巳の実験的作品「秋影」なども印象に残る。特に森田緑の作品は、寂寞とした冷気漂う風景を、恐ろしさを感じるほどに描写している。
洋画部の作品も流石に幹部は安定した作品を発表している。樋渡涓二の「小雨のグラン・ブラス」をはじめとし、吉永正の「浅草」、平林喜市「初雪朝」、小室禮子「黎」など。他それぞれにも努力の跡が見える。
彫塑部は出品者こそ少ないが幹部は南部祥雲、小田章二、望月力など本格派が揃っている。工芸部は各ジャンルともに意欲的作品が多く、渡辺六郎、三澤博、青木九仁博(=作品「軌跡」)、児玉陶欧(=作品「均窯花器」)、岩沢実千代、加納啓子、増子一秀、竹田安子、坂江伸仁らの各作に着目。【小島一郎】
(5・8〜19、東京都美術館)
→ 社団法人日本画府のHPはこちら(主な作品21点を展示しています)
先ず70回という歴史に敬意を表したい。昭和12年、羽藤馬佐夫らが東京芸大在学中に創立。大戦の苦難期も一度として休会する事無く、いまなお羽藤淑子(=作品写真右側「折館さん」)、加藤正信(=作品「秋立つ」文部科学大臣奨励賞)、白石延夫の3名が、創立委員として健在である。
昭和53年より代表羽藤恒郎(=作品写真左側「祈り」)、副代表羽藤朔郎(=作品写真右下「方向性のある物達」)となり、現在の常任委員は吉田貴美江(=作品「さんぽう柑のある静物」東京都知事賞)ら5名、委員東山直子(=作品「アメリカン・ドールズ」朔日会賞)ら5名と、新旧の断層もなく、自らの道を邁進し続けている。
第1室から第18室までを通覧して、印象を新たにしたことは、生気溌剌たる色感に、鮮度が高まった作品が随分増えた事と、重厚なマチエールを駆使したものの中にも、仄かな情感の漂う新しいロマンの展開があって、会場が大変明るく、若返ったことである。
とかく慢性化した制約の中に埋没されがちな今日にあって、これは美術館の壁面を存分に活かしきった一つの好例であろう。自由と奔放も程々であり、活気があってなかなか良いと思われた。
(5・9〜19、東京都美術館)
今世紀最初の日本書芸院展は《新世紀書法展》と銘うたれ、3月25日〜31日まで上海美術館で、そしてこの5月に大阪でそれぞれ開催された。(右作品写真=名誉顧問村上三島)
これは社団法人日本書芸院と上海美術館の、友好提携十周年を記念してのもので、第二会場のOMM二階展示ホールCでは、日展委嘱以上の同院幹部役員による、代表的大作が会場一杯に展示され、現代中国代表作家展と併せ、上海での一大展観を再び大阪に現して、来場者の感嘆を誘った。
前理事長の尾崎邑鵬氏が常任顧問となり、一連の今回展は、栗原蘆水理事長(=作品写真左側)、日比野光鳳、杭迫柏樹、井茂圭洞、劉蒼居各副理事長の新体制の下に開催されたわけだが、メインとなる'01日本書芸院展には、特別展観として書画同根を実際に目の当たりとする、上海博物館蔵の明清書画扇面名品百選も併催されており、実力作を一堂とする本展と併せ、実に盛り沢山の内容となった。これこそは、名実ともに日本最大を誇る、日本書芸院の底力というものであろう。
漢字各体に仮名、調和体と、特にテーマは設定せず、各自が平素から追求する美の世界を筆に託す。豊富な人材と確固たる機構に育まれた大輪の華が、一際鮮やかに咲き揃った記念展であった。
(5・10〜15、大阪天満橋松坂屋)
野に在って栄利に心を動かさず、孤高にして純粋に、清廉な一生を終えた陶淵明は、自ら「五柳先生伝」という自叙伝だと言われるものを書いている。この会の名称は、その純粋な生き方から自己啓発の道を学び、更に新たな書の創造を目指すため、この五柳先生にちなんで付けられた。現在の書壇にあっては、極めて希少な、在野精神を貫き続ける会である。
昨年の区切りとなる第40回記念展は、原点に帰り、陶淵明の詩文を素材としての発表であった。21世紀を迎えた今回は、そこからまた新たな一歩へのスタートとなる。
会風は無所属が故に、極めて自由闊達。しかしベースだけはしっかりとこなしている。出品作は創作と企画の二本立てだが、先ずあるのは企画。今年は『臨書・日本の書漢字・上代〜平安時代』がテーマとして取り上げられた。各自が自分自身で選んでいるので、法帖の選択には、かなりの苦労があったようだ。
転じて創作は、まさしくこの会ならではの多彩さ。掲載とした野上田陽山会長(=作品写真右上「七言對句」)、四宮岳翠副会長(=作品写真左上「歸鳥四章(部分)」)及び役員の中塚桐華、堀田翠汀、野上田幸苑、丸川幽香の各氏らを筆頭に実に様々な作調が楽しめる。和をもって成す相互の信頼関係のもと、更なる進展を望みたい。
(5・8〜13、大阪市立美術館)
独立会員書展
小林抱牛理事長、戸田提山会長をはじめ、会員378名の中より出品した179名の各作を通覧すれば、流石に個性的な逸材が多い事に気付く。本団体の担う大使命には、常に大きな期待と関心が寄せられており、注目を集める活発な新動向のひとつとして、一回毎の開拓・前進に、今後とも目を離すわけにはいかない。
現代書が高度な筆技・筆勢にあるとされるならば、線質の洗練もさることながら、あくまで筆速と筆圧如何に関わるべきではないかと思われてならない。即ち表現の書としての、生命の躍動という一点からである。
ここ3〜4年は、半紙以内の一部作品と、全紙までの二部作品に分けられている。陳列も整然と区分けされており、広い会場を埋め尽くす出品作は、厳選を経た結果として、感動、情熱、鋭敏な感受性が逞しい意欲によって、見事に活かされた作品が実に多かった。そんな中より掲載は、注目の女流作家の二点に絞らせていただいた次第。(作品写真右上=森本妙子「早春」、作品写真左上=矢萩春恵「翠」)
(5・15〜20、東京セントラル美術館)
1937年9月、高邁にして清新かつ伝統の革新による民族芸術の樹立等、高い理想を掲げ、日本美術院から離脱独立して創立した新興美術院の精神は、1938年3月東京府美術館において旗揚げした第一回展以来、連綿と受け継がれており毎回優れた作品を発表してきた。1944年には第七回展を迎えた。戦争は絶望的であったが、東京が焦土と化するなど、想像もできなかった。
廃墟の中から再び立ち上がり、再興第一回展を開くまでには、それから七年の歳月が必要であった。1951年6月、朝鮮半島では米韓連合軍と北鮮中共軍が、死闘を繰り返しているときであった。第51回展を迎えたいま、新興美術院の歴史に生きた人は、殆ど他界された。今こそ創立の精神を顧み、永遠の理想追求に邁進するべきと思う。
幸い現メンバーの平田春潮理事長(=作品写真右上「神楽・紅葉狩」)、飛田啓之介事務局長(=作品写真左側「棲む」)、小林恒岳(=作品「凍」)、御田勝平(=作品写真右側「最上川源流」)、大槻悦康(=作品「椿」)らをはじめとする各常任理事、また今回、新興美術院第一席に輝いた浜中利夫(=作品「大地のよろこび -四季- )など、各理事陣容のいずれもが、他展に引けを取らぬ逸材である。同院の発展に尽力されると共に、文化遺産となる作品を残して欲しい。【小島一郎】
(5・22〜30、東京都美術館)
→ 社団法人新興美術院のHPはこちら(主な作品21点を展示しています)
1924年に結成され画壇の本流にあった槐樹社が、1932年に解散分裂し、同年結成の東光会と、翌年結成の旺玄会に分離した。その後、戦局悪化で1944年に活動中断。1947年に旺玄会として戦後の混乱のなか再発足。この歴史に立つ旺玄会は、己の信ずるままを自由に表現する気概をもった、多士濟濟の展覧会である。
伝統的絵画から、超現代絵画までが混然と展示されているので、脳神経のスイッチ切替えに大忙しとなる。年功序列で場所を取る、担当者のご苦労をお察しする。
洋画部門では、流石に常任委員の作品が安定している。前代表の野老山作太郎(=作品「旧道」)は健在であり、遠井正夫の赤レンガシリーズ(=作品「日本の鉄道の象徴」)は、作家の真面目な性格が忍ばれる。現代表勝俣睦の「湿原に咲く花」(=作品写真右側上)は、「春雪」ともに湿度を描く独特な画法であり他に類を見ない。第一室では吉尾芳郎の「独り占い」(=作品写真左上)が印象に残る。なにを占うのか、鬼気迫る不気味ささえ感じる。対象的な作品は、吉尾房子の「旅の日(ミコノス島にて)」であり、穏やかなドラマが感じられる。安田火災美術財団奨励賞となった杉僑二の「山里」(=作品写真右側下)は、自然を心象画とした力作である。【小島一郎】
(5・22〜30、東京都美術館)
→ 旺玄会のホームページはこちら(主な作品21点を展示しています)
プロムナード
書道夏の陣が開幕し、上野の杜は書道一辺倒。木々の青葉に呼応する如く、街頭画廊では、個展や社中展も各種の企画で賑わいを見せる。以下、主なところからは。
◇鴨田茜竹書展 第4回の個展は称して《今ある私》。師風群のエキスをどう昇華させるか。篆書にその生命線を追う。 4・10〜15 銀座鳩居堂
◇東京寒玉選抜展 特別出品に宮本竹逕会長。東京および近在の寒玉会員82名が、親睦をかねての第1回展を盛会に。 4・10〜15 東京銀座画廊
◇第31回青龍書展 相澤龍雪会長亡き後、代表鈴木翠羊が社中を良くまとめ、恒例展に一年の研鑽の成果を披瀝。 4・21〜24 錦糸町/すみだ産業会館サンライズホ−ル
◇第8回鶴心女流書展 会長の山田松鶴氏が賛助出品。隔年ペースで15年が経過した。骨格逞しい漢字を主体に、半切迄に力感を籠めて。 4・27〜5・1 銀座松崎画廊
◇第18回日本書鏡院選抜展 長谷川耕生会長の2点を中心に、3階31点、4階29点の出陳。手頃な鑑賞作で、作調もバラエティー豊か。風雅な展観に文人の素養も。 5・1〜6 銀座鳩居堂画廊
◇第25回記念青桐書展 鈴木桐華会長「安無傾」をはじめ88名が毅然として記念展にむかい、いつにも増した清新な作品を揃え。 5・4〜9 銀座松坂屋カトレヤサロン
◇抱一会企画佐々木學龍書作展/山田修子書展 共にタイトルは《白の光芒》と《心の内奥を見つめて》。両名それぞれ、その持てるところを精一杯出して好評。 5・7〜13 銀座アートホール
◇第16回香象会小品書展 賛助出品堀桂琴。先師手島右卿ゆかりの女流書家24名が、各々の道を真摯に歩んだ成果を半切迄の小品に込めて。 5・8〜13 銀座鳩居堂画廊
◇第46回新世紀展 第17室迄に402点の出品。回を重ねて中堅の成長に顕著たるものがあり、展望明るく意欲を燃やす。 5・9〜19 東京都美術館
◇第27回結城天童生々会展 日本画による恒例展には33点の出陳。身近な花や静物、外地を交えた風景に誠意を込め、落ちつきある壁面を展開。5・10〜13 武蔵小杉/川崎市中小企業婦人会館
◇小野之鵞遺墨展 書道研究斯華会の小野之鵞前会長の七回忌にあたり、その創成期から平成6年11月の絶筆「燦然」までの36点を一堂に、故人の業績と人柄を偲んで。 5・15〜20 銀座鳩居堂
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