年間を通じ、決して見落とすことの出来ない書展のひとつとして、いつも心を躍らせて会場に入るのが、この抱土社展である。
上野の森美術館の全館を使用し、小林抱牛(=作品写真右上“悲しい道”)、上松一条、貞政少登、中野大雅、南尚雲、小木太法、森本妙子、柿下木冠、溪口幽城、矢萩春恵、大石千世、高橋照弘など。名実ともに独立書人団の中核を成す22名の全霊を賭す大字や、一片をも揺るがせにしない多字、仮名、詩文書等の4〜7mを超える大作や中品が、広大な壁面を埋め尽くす会場は、いつもながらに壮観の一言。各個様々に躍動するエスプリは、それ自身、最も純粋な作家としての生き方に相違なく、従ってまた少数精鋭の実に逞しい探究意欲に一貫されている。
この全力的な姿勢ほど清々しいものはなく、第1回から現在に至るその永き持続は、正に見事という他ない。広い待望と関心に応え、至高を求めての展開に、期待は高まるばかりである。
(10・17〜22、上野の森美術館)
昨年、創立50周年を迎え記念行事を完遂した書道同文会は、去る6月の本展以降、総会にて中山竹径氏が新たに会長に就任。体制を改めての恒例代表作家展となったが、この間、創立者高塚竹堂直門の女流逸材として衆目を集めた、中家小竹氏と國貞馨竹氏が相次いで逝去され、共に遺墨での参加となった。先ずは心からご冥福をお祈りしたい。
メインとなる中山会長の半切作“川上のゆつ磐群に草むさず常にもがもな常處女にて”(=写真左)をはじめ、小品ながらもその手応えは、流石はベテラン揃いならではと思われた。星霜とともに、出品者には孫弟子も増えてはいるものの、額、軸等、手頃な鑑賞作品に105名の競演が楽しめる。
仮名にしても漢字作品にしても、素材となる言葉や句に筆意を凝らし、それぞれツボを心得て、高水準での調和が果たされている。その意味からも、実作としての成立の必然に、頷首される作品が多かった。
(10・19〜24、銀座鳩居堂画廊)
主催心芸墨美作家協会。後援中華人民共和国日本国大使館、産経新聞社。
酒井子遠を代表とし、特別顧問に表立雲、運営委員の岩浅写心、遠藤香葉、永井櫻舟、望月暁雲、吉田永欽ら10名の各氏が情熱を燃やす、臨書模刻作品のみによる全国規模の第14回展。
会場もよく整備され、出品内容においても、年々水準の向上と共に安定性を増しており、先ずはなによりと思われた。伝統書と現代書の区別には、抵抗があって然るべきだが、コピーと創作が混沌としてまかり通っている今日では、敢然とそれを識別していかなければ、果して真の現代と成り得るかどうか。確固たるベースがなければ、当然展開など覚束ないからである。
文化は栽培といわれ、その成長には不断の継続が求められる。来年はいよいよ記念すべき第15回展。貴重な存在として、更に意を結集しての邁進に期したい。臨書大賞=鈴木秀翠。模刻大賞=鐘馗孫。準大賞=杉山美華ら3名(=会場写真右上、上位入賞者コーナー)。他各賞多数。
(10・19〜22、埼玉会館)
毎日展審査会員で東方展同人・審査員、東京書道会理事、朝聞書会運営委員の柳 碧蘇(やなぎ へきせん)氏が主宰する、蘇心會の第3回展。柳氏は昭和22年生まれ。故・松井如流に師事し、理知的な作調で近年とみに活躍を増す、関東書壇のホ−プである。
主宰は第一期の頃の百選墨を用いた淡墨作“道一”(=写真左上)と、小品ながら重厚な風合いを持つ“幽遠”の濃墨作で2点を出品。殊に前者は、その冴えある墨色や余白とのバランスに加え、「一」という究極的な素材に対し、鋭利な造形センスの才覚を如実に示して着目された。
くしくもモダンとクラシックの対比となったが、会員26名の作品も、淡墨少字と濃墨多字で、略この二極に統合される。隔年開催なので、これが5年目となるが、伝統を守りつつ現代を開拓していった先師の道に基づき、会の方向性も概ね定着をみたようだ。
澤近碧珠、吉越白光ら会員の平均年齢も30代と若く、大いに次代を担ってもらいたい。
(10・23〜27、銀座かねまつホ−ル)
國藝書道院会長で、産経国際書会副理事長を務める斎藤香坡氏の書展。個展はすでに20回を越えるが、昭和63年からはこのタイトルで続けられている。
昨年は地元横浜に三会場を設けたが、今回は銀座四丁目交差点脇、日本最高地価の鳩居堂での開催となった。
出品は強い切れの細線を駆使し、かつ通釈を添えた白居易、王維、李白などの漢詩と、人柄をほのぼのと伝える書画を主体に、心象作や刻字を交え全36点。
氏の作品の根底には、たえず人への温もりや思いやりが流れている。無論それは、独自な開拓による線質の裏付けがあってこその事なのだが、品位を伴いつつ、作者の人となりを包み隠さず伝える個展には、そうそう出会えるものではない。
会場出入口ロビーの脇。さりげなく置かれた“いつでもまたおいで”の書画作に、氏ならではのヒューマニズムの集約を見た思いがした。書は心声とも心画なりともいわれるが、これを実践し得る作家は希少だ。
(10・26〜31、銀座鳩居堂画廊)
創始者である故・河口楽土翁の遺財を継承する日本自由画壇展は、東京都美術館で開催される夏の本展との関係から、小品による秋季展を併せ持ち、一年のスケジュ−ルを完結する。
出陳は幹部役員、評議員、壇人らが各10〜20号で全109点。専ら水墨の世界だが墨彩傾向が強く、理事長橋本不双人“スークへ”(=写真左)をはじめ、池田蘭径“グリューイエルの城門”、多田静村“漓水の朝”、間宮露庵“ゆくラクダ”等、外地に取材しての作品も多い。
人物もまたしかりで、小竹清園“寛ぎのひととき”や、モダンな味わいの藤沢古葉“裸婦”(=写真右)など、主題の選択にも大きく時代が反映され、リアルな傾向が目立つようになっている。これは当然ながら、明らかな前進と見なければならないであろう。その観察眼はもとより、対象把握の姿勢にもしっかりとした安定を見せている。
他、主なところより河口小波“信州の秋”、脇野千種“ゆらめき”、橋爪紅翠“霧晴れるエメラルド湖”、西田昌功“霜の朝”、和田伊織“卓上のシンフォニー”等を挙げておきたい。
(11・5〜9、銀座松坂屋別館5階カトレヤサロン)
プロムナード
一般の電話回線でインターネットに接続するには、ブロバイダーとの契約が必要となる。当然それなりの接続費用がかかるが、無料でネット接続サービスを提供するところも、ポツポツと出はじめている。
女性限定ながらShes.net(http://www.shes.net)もその一つ。会員のプロフィールを統計資料に利用したり、アンケートに協力してもらうことにより運営されている。朝6時から夜10時まで、無料で接続できるとの事なので、さっそく妻にオンライン登録をさせた。
ネット上には無料のソフトも沢山ある。だが、いい気になってダウンロードしていると、知らぬ間に国際電話に回線が切り換えられ、後日、法外な料金を請求されることもあると、パソコン仲間が教えてくれた。タダより高いものはない。ということは…。
【藤谷弥道】
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