美術鑑賞社 インターネットギャラリー
1999年6月10日


 

 第23回桂紅会書展

 楢崎華祥氏(臨池会副会長)が主宰する桂紅会の第23回展。賛助出品に日本芸術院会員の杉岡華邨氏。

 出品は額、軸装を主体に帖、巻子、また12名によるパネル“さくら”や、8名による衝立などの合作を交え全60点。無論キャリアによる差はあるものの、真摯な追求から高水準でのまとまりを見せ、会場は典雅な作調で統一されている。

 今回は特に明るさを念頭に、空間を活かした作品造りとしたとのこと。全体を通じては寸松庵や本阿弥を基盤とし、流れは一条摂政集に求めての創作である。概略すれば円滑自在の律動感、筆力と連綿の妙による創造性、そして風雅さを身の内にしながらも、自由奔放な鋭き線による現代展開と言えようか。

 掲載とした主宰作“夕櫻静かに人の酔ひさむる”(=写真右上)は二百五十年を遡る古墨、程君房の押さえめの墨色が情感をより高める快作。加えては吉雄久美子、根来睦子、内田志げ子、飯島香苑、佐藤佐代子、杉浦華桂らの健闘が光る。

(4・16〜20、有楽町朝日ギャラリー)

 


 

 第4回楽書展

 紫雲書道会会長の大越雪堂氏が主宰する楽書会の第4回展。三年に一度のペースで、地元のこの会場で開催されている。

 社中からは71名が骨格逞しい漢字を主体に、調和体や仮名をまじえて、日頃の鍛練の成果を伸びやかに披瀝。日名子英堂、高木悦舟らの二×八尺三〜四幅の大作を含め、真摯な制作態度に好感が寄せられた。

 主宰は会場中央に北魏の“臨 穆亮墓誌銘”を、五三×二二六センチの紙面五幅で展開。入口ウィンドウの原拓と併せ、大方の関心を高めていた。また一角には喜寿を迎えた氏の作品コーナーが設けられ、競書誌「紫雲」や、代表を務める歌誌「きさらぎ」の巻頭を飾り続けてきた山頭火句の作品、及び自詠による半切軸など38点が展示された。

 掲載とした八木重吉の詩はそんな中の一点。自ら歌集八冊や評論集を上梓し、歌人としても著名な氏だが、この片仮名による書でもまた、草分け的存在である。

(4・23〜26、武蔵野市民文化会館展示室)

  


 

 第23回青桐書展

 昨夏の幹部による青桐連枝四友書展に続き、この春先には柴田新風、清水恵子、須戸翠扇、根本青蘭ら閨秀4名による女流青青会書展の開催と、生え抜きの有為なる資質の意欲的な発表から、近年ますますの充実ぶりを見せる青桐書会(会長鈴木桐華)の第23回展。

 現代書としての新手法の開発とその実践に、身を挺している研究グループとして、すでに注目されて久しい。会長作“養眞”(=写真左)は潤滑が鋭き線質に呼応して流石の冴えをみせ、理事長鈴木響泉“森”(=写真右)には形象に増幅する生命のイメージが感じられる。他、主なところでは佐々木蔦月、栗原桂山、粕谷鮮影、杉山聽雨、伊藤省風らと前述の4名等。

 出品は全98名と、昨年に比べ点数は多少減ったとのことだが、総じて作品の密度は上がっている。濃淡を問わず、少字数を主体とした精力的な展開から、意識の上でも思考する方向が実に明確に示されており、健全な前進を続けている。

(4・27〜5・1、銀座松坂屋カトレヤサロン)

 


 

 第16回日本書鏡院選抜展

 上野での本展(6・24〜29、東京都美術館)に先駆けた、日本書鏡院の恒例となる第16回選抜展。

 先師長谷川耕南の遺墨を囲む出品メンバーは、賛助出品の稲垣黄鶴を含めた55名。三階は本展での最高賞となる文部大臣賞受賞者で占められており、長谷川耕南会長の篆書作“山間明月河上清風”(=写真右)をはじめとし、散見される南画と併せ、各体に手堅い作品が出揃う。

 専ら半切二分の一迄の手頃な鑑賞作品の世界だが、古典に学び、伝統に立脚した書表現を小品に凝縮した成果を、実力者らしく手中の筆致で発揮。和やかな中にも緊張感が高められる。そんな場中より今回はもう一点、蘇東坡詩を木簡調にまとめて創意を凝らす須藤玉誠“浮雲有意蔵山頂…”(=写真左)をピックアップしたい。

 転じて四階は審査員及び鑑査員からの院賞受賞者。一見オーソドックスな作調だが、長谷川耕史、長谷川有香、渡辺愛花らのフレッシュな感性に着目された。

(4・27〜5・2、銀座鳩居堂画廊)

 


 

 第14回香象会小品書展

 「桜の季節の中、右卿先生の十三回忌法要が八王子の墓前でとりおこなわれました。過ぎゆく年月の早さを味わい、書への取り組みをあらたに決意いたしました。」と昭和の巨星、手島右卿直門の女流書家24名が意欲を新たに、充実した快調ペースを展開している。

 足しげく通った鎌倉の師の居宅、抱雲荘に因んで抱雲女流選抜展としてスタートをきったが、10回を期にその裏山から名付けられ香象会と改称。現在は師から受けた限りない薫陶を胸に自らの心を書に託し、その精華を紙面に表出する。

 淡墨の柔らかきフォルムに月光の朧を映す小川白果“月”(=写真左)、独自の仮名美と強さを見せる森本妙子“行きすぎて尚連翹の花明り”(=写真中)、曲線に温もりと慈しみを宿す矢萩春恵“陽”(=写真右)。更には秋本耿雨、岩井鳳水、大石千世、川崎治子、島内茉里、流目翠蘭、堀桂葉、松浦江秋等々。各々の探究による個性の競演は見事の一言。正しく貴重な存在である。

(5・4〜9、銀座鳩居堂3階画廊)

 


 プロムナード

 青丹会書展(会長松塚玲糸)は毎年新緑の頃、本拠を置く古都奈良の、県文化会館で開催される。ゴールデンウィーク最中の5月2日、今年も取材に訪れた。

 羽田から早朝の飛行機で先ずは関西空港へ。南海、近鉄と電車を乗り継ぎ、午前11時前には会場に入る。アカデミックで意欲清新な仮名作品を堪能しつつ取材を終えれば、今度はとんぼ返りに伊丹空港へ。夕方6時からは横浜で、第66回県展のレセプションが控えている。次こそはゆっくりとといつも思うが、出張は大概こんな感じだ。

【藤谷弥道】

 


BACK
 NEXT


すべての著作権は作者に帰属します。
画像データ等は鑑賞を目的とする以外の2次利用を禁止いたします。
企画・制作 美術鑑賞社 藤谷弥道

連絡先 bijutsu@jcom.home.ne.jp


ホームページに戻ります。